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インタビューinterview

2019.11.12

民泊経営の経験を不動産業に!株式会社イトーハウジング
取締役 伊藤愛美(まなみ)さん

跡取り娘インタビュー Vol.9 株式会社イトーハウジング
取締役 伊藤愛美(まなみ)

血縁関係の無い三軒茶屋の不動産会社から父が事業承継をして、同じ場所で約50年間不動産会社を営んでいます。自分自身では2016年に民泊運営代行会社を設立。
少なからず経営の経験があるというのは大きかったかもしれません。

株式会社イトーハウジング

事業承継をどのように進められたか
~承継時の親子の関係を教えてください

当初は私自身が民泊の運営代行の会社をしていることもあり、民泊=「闇」というイメージだったので、同じ不動産業界として、周りや大家さんに言いずらいという印象を持たれていました。また、未婚であったため、結婚する相手によって会社が左右されてしまっては困る、という気持ちを父が持っていたこともあり、中々事業承継を決めかねていたと思います。
父が気持ちを固めてくれた点としては、
①高齢になりそろそろ後継者を決めないと会社の存続が危ういと強く認識したこと
②私が結婚を決めたこと(相手が大手のサラリーマンであると大層喜ばれました笑)
③不動産に関わる資格(宅建など)を勉強して合格までこぎつけたこと
④父の会社に顔を出して従業員とコミュニケーションを取ったり、改革に前向きに力を注いでいたことが挙げられると思います。
(自身が持ってきた案件で多少なりとも売上に貢献したこともあると思います)一番大切なのは、娘である自分が「覚悟」を決めてやっていくんだということを父が認識したことだと思っています。口先だけの人は誰も信用しませんよね。そして実績を作ることも大切だと思います。

事業承継後に娘の立場だからこそできたこと、難しかったことはなんですか?

まだ本格的に承継はしていませんが、娘の立場だからこそできたことは、家業を継いでいざダメになっても、旦那さんが安定した仕事をしてくれていればいざ潰れても何とかなるという保証があると父が思ったことでしょうか・・(苦笑)
会社の存続ももちろん大切ですが、子どもが苦しい生活をしたり、好きでは無いことをしなくてはいけない、本当にそれが幸せなのか、と親心なら思ってしまうものなのかと思います。
また、周りの方が応援してくれるというのもあるかもしれません。
「女の子だから」という訳ではないと思いますが、周りがサポートして応援しよう!と仰ってくれる方もいるので、父が元気なうちに、考え方や仕事の仕方、人との付き合いも含めて承継して行きたいと思っています。
難しかったことは、さっきと表裏一体になってしまいますが、結婚する相手によって父の考え方や決意が変わってしまうことかなと思います。パートナーがどういう人なのかは特に気にしていました。

事業をやっていく中で変えたいこと、変えたくないことはありますか?

~理念・ビジョン・社訓など
「理念」自体は変えずに行こうと思っています。
~ビジネスの中身、やり方など
時代に合ったビジネスをしていかないと、生き残れないのは正直あると思うのですが、何もかも変えるというよりも、古き良き仕事の仕方は残しつつ、時代に合ったスタイルで取り入れた方が良いものは取り入れるという風にバランスを持ってやりたいなと思っています。
~マネジメントスタイル
小さい会社なので、正直組織としてあまり機能していない部分があるので、
良い部分も悪い部分もありますが、良い人材をいれていくためにも、一から色々
と見直していきたいなと思っています。
~これらに「女性ならではの視点」などがあればぜひお聞かせください。
特に私が強くやっていきたいなと思っているのは、在宅ワークの導入です。
不動産業界もやっと変わってきており、今はIT重説といって、賃貸の場合はITを使って不動産業で必須な業務を行えるようになったので、在宅で働きたい宅建の資格を持っているママなどに活躍して頂けると思うので、アウトソーシングできることはしていきたいと思っています。

これからの展望はありますか?

父が築き上げた規模と同じ規模で今後も存続させていきたいと思っていて、
私の代では3つの軸を強化したいと思っています。1つは、在宅ワークの活用。
正社員ばかりを雇用するのは中小企業には合わないのではないかという持論があるので、在宅ワークで補えることは取り入れていきたいと思っています。2つめは、外国人向けのサービス強化。インバウンドの観光客の増加に加えて、移住者も増えてきているので、外国人向けの賃貸ニーズは更に高まって行くと考えています。ただ、三軒茶屋という土地のカラーもありますが、中々まだ外国人に対しての印象が改善されていないことも否めないので、大家さんにとってもプラスとなる提案が出来る工夫をして三方よしの形を築けるようにしていきたいと思っています。そして3つめは、地域との共存。世田谷区も色々な政策をしていて、もっと地域と共に地域に根ざした不動産会社や老舗企業が出来ることってあると思っています。ですので、今後は三茶MAPを作ったり、入居者さんに穴場のローカール店を紹介したりなど、地域に根ざした活動もしていきたいと考えています。

これから事業承継を行う女性の方々へのメッセージ

私は自分自身でもビジネスをやっていて、会社を創った時に決めたことは、「自分のライフスタイルが変わっても、自分らしく働ける規模でやっていこう」ということでした。無理をしてしまうと、自分の体調にも影響したり、子どもや周りの方にも迷惑をかけてしまうかもしれません。クライアントさんにもです。どこを目指すかは人それぞれですし、今の会社規模も違うので皆さんに当てはまるかは分からないですが、目指すべき形を決めておくのは大切かなと思いました。
あとは、自分の発想やアイデア、考えも遠慮せずに出していくことです。
事業承継をすることは義務ではないですし、自分でやりたい!と思ってやる方が絶対続くし、父や創業者に対しても失礼に当たらないと思っています。
もちろん、いろんな状況があるので、選べるだけ幸せなのかもしれないですが、
関わる、継ぐと決めたからには遠慮せずに、120%自分の力を注げることが大切かなと思います。その方が創業者や父も喜んでくれるのではないかと思います。
これからはますます女性の視点、アイデア、発想、存在がキーポイントになっていく時代だと思っています。跡取り娘の皆さんで力を合わせて頑張っていきましょう!

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