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インタビューinterview

2019.07.01

経営者は平等。女性である男性であるという意識をする必要は全くない

跡取り娘インタビュー Vol.4 石坂産業株式会社 代表取締役 石坂典子さん(後編)

埼玉県三芳町にある石坂産業は、持続可能な社会を目指し、廃棄物のリサイクル率98%を実現する企業です。
今回は後半。事業承継後の思わぬ問題発生から、今後のビジョンについてお伺いしました。

石坂産業株式会社 コーポレートサイト

―会社を継ぐ期間はどれぐらいがベストだと石坂社長は思われますか?

10年がベストだと思います。私は10年間の間に、ダイオキシン問題の裁判をクリアしたり、リーマンショックがありと様々なことを経験し、そして怖いものがなくなっていきました。

そうすると判断に迷いがなくなり、それが継がせるタイミングだと思います。しかし、父親がそのタイミングをいつまでも子供扱いしていて見てくれないのです。 だから、いつまでにこの理由で継がせる。だから自分を見ずに、次期社長である娘を見てほしいと従業員に宣言するのが大事なのです。そうしないとダブル経営になってしまいます。

自分が経営を継いだ後に見る人の目線が父親から私に変わりましたが、そうすると父親はさみしくてしょうがないのです。私の父も少し不安定になりました。だからこそ、創業者である父親の居場所を作ることも大切な二代目の役目であると私の失敗から思います。

―事業承継のタイミングはいつ誰が言うのがベストだと思いますか?

創業者のように力のある人は、自分の物差しがあるので経験も浅い二代目が敵うのは難しいです。娘が本気になったら、息子が成熟したらと待っていたらいつまでも継ぐタイミングはできず、気づいたら病気になってしまいます。

しかしながら、なかなか企業のトップに周囲の人がアドバイスするのは難しいです。事業を継ぐタイミングをいつにするのか、話すことができるのが親と子の対話のみであると思います。時間を取ってもらって、事業承継をしたいという自分の思いを伝えて、期間限定でチャンスが欲しいと自分の思いを伝えてみてください。
そのチャンスをもらうことができれば、ほぼ突破です。後はそんなに難しくなく、粘り強さとあきらめない心が大切だと私は思います。

―事業をやっていく中で、社長が相続されたうえでビジョンや理念を変えたところがあれば教えてください

私は100%のリサイクルできる工場を作るのが夢です。それに対する行動指針を経営理念としてもらいました。そして、それは私が最も大切にしていた父の経営理念でもありました。それを従業員に浸透させ、そして新しく入る方にはこのことに共感できる人だけに会社に入ってもらうようにしました。

地域の社会活動である、里山保全もお金がかかるし、本業の重荷になるが、それをどのようにクリアしていくのが私の代の課題でした。この時に社員の人と一緒に考えたコーポレートアイデンテティになったのが「自然と美しく生きる」というスローガンでした。

私たちの事業の最終的な目標は、ごみを100%リサイクルするのはもちろん、とりまく環境を考えると、地域の環境を保全したり、保護したりすること。理解してくれる社員の人と意見交換し、一緒に考えたのです。地域共生の社会性を何がビジネスになるか、経済と一体化させるのがなかなか難しく、ボランティアは限界があります。
これを次の代に重荷にさせないのが私の今のミッションです。

―最後に事業承継をされる女性に向けてメッセージをお願いします

私は女性である、男性であるという意識をする必要は全くないし、平等だと思っています。
今の時代、自分でやれるとおもったらどんどん挑戦してほしいし、必要だなと思うことが見つかったら一生懸命やってみてほしいです。

私も子どもが小さいうちは「ごめんね」と思うこともありましたが、大きくなった今振り返ると、子どもがすごく自立していて働いていて良かったと思います。子どもは親をよく見ているので、キャリアを持つ母親の子どもはキャリアを持ちます。

お母さんが仕事に対してポジティブな面を見せていると、子どもは応援してくれます。保育園に入れない、遠方で親を頼れないという問題がある方はいると思いますが、それ以外は心配する必要はないと思います。

うちの会社でも育休中の人が3人いますが、子どもを連れてでも出社してほしいです。今の社会はそのようにしないと難しいと思うのです。

また、130万円のキャップも外せば良いと思います。働く女性には意識を高く持って働いてほしいのに、そのキャップがあるからポテンシャルや意欲が無駄になります。
母親が働く姿を子ども達に見せ、働くことの意識を子ども達に小さいころから教えてあげてほしいです。妻が働いて、夫を食べさせても良いのです。

これだと決めつけず、今は多様な時代なので、ライフステージやライフスタイルは自分で好きなように選択してほしいです。

私は父に一度しか褒められたことはありません。それは、ダイオキシン問題の時に焼却炉をやめたことにより、売り上げの低下が懸念されることがありました。

そのことを回避するために、私が全国を回って焼却物を流し、利益をあげるための営業を行いました。結果、売り上げが落ちることを回避できたのですが、それを従業員の前で父が褒めてくれました。すごくうれしかったです。

でも、それ以外ではありません。父のプライドか、私に調子を乗らせないためかはわかりませんが、私はそれでよかったと思っています。なぜなら、私は怒られると二度と怒られまいと思うタイプなので、あえて父は落として這い上がってくるのを待っていたように思いました。

本来経営者がやるのは次の経営者をきちんと作って終わりだと思うし、それをできた父はすごいと思います。経営者は根拠がなかったとしても、社長任せてください、付いていきますと言ってもらいたいのです。父ができることを奪うのではなく、父ができないことをサポートするのが事業を継承した者の役目です。二人三脚が大事なのです。

とても参考になるお話ばかりでした。 本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました。

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