日本跡取り娘共育協会 監事
小林博之

女性の事業承継者が増えている

「跡取り娘.com」のウェブサイト開設にあたり、なぜいま「跡取り娘」なのかを考えたいと思います。

日本において、ファミリービジネスは企業数の約97%を占め、その大半が中小企業となっています。いま、その中小企業が後継者難の問題をかかえ、いかに事業承継を行っていくか、が大きな話題となっています。

戦前からの日本の「イエ」制度の考え方の中では、長子相続という考え方が根強く、会社を継ぐのは長男、と考える経営者が非常に多かったのが実情です。

しかしながら、中小企業経営者のご子息の中にも優良大企業で活躍される等でファミリービジネスを承継しないという選択肢を取る人も増えており、また一方で女性活躍推進の中で、女性でも起業したり会社の経営を承継するケースも増えてきました。

これを少しデータでお示ししましょう。

帝国データバンクの2018年の調査によると、企業経営者に占める女性の比率は下記グラフのように年々増えてきており、2018年には8%近くまで上昇してきました。

特に不動産業、サービス業、小売業など、女性のきめ細かさを生かしたビジネスが成功する分野において、特に女性社長の比率が10%を超える業種も出てきています。

このように女性が経営者になるケースで、どのような経緯でなっているかを示しているのが次の表です。新任の女性社長の場合、その約70%が同族承継で社長になっているのです。

また、日本政策金融公庫の2016年の調査によれば、「どんな人を後継者にする予定か、またはしたいか」というアンケートの結果としては、引き続き長男という回答が約半数を占めるものの、「女の実子」「息子の嫁・配偶者」という回答が飛躍的に増加している、ということが見て取れます。

このような状況の中で、「跡取り娘」たる女性の経営承継者は、男性の場合と異なったさまざまな悩みを抱えています。小職は昨年より昭和女子大学キャリアカレッジ女性後継者育成プログラム「跡取り娘養成コース」で講師を務めていますが、その中でも受講生(跡取り娘さんたち)からさまざまな悩みの声を聴きます。

(例)

  • 経営者、娘、妻、母、などさまざまな顔をもつ中でいかにバランスをとっていくか
  • カリスマ社長のようなトップダウンの経営スタイルは合わないなかでどんなマネジメントスタイルが良いのか
  • 先代の社長を支えてきた番頭さんなど幹部社員の代替わりをいかにうまく進めるか
  • 女性の目線を生かしたビジネス、マーケティング、ブランディングを導入していきたいがどうやって変えていけばいいか
  • 男ばかりの業界で女性経営者としてどうやって立ち回ればいいか
  • 経営者の集まりに行っても、「女性なのによく頑張っているねえ」としか言われない。本音で話し合える場がない
  • 女性経営者としての悩みを相談するにも高校や大学の友達はみな勤め人で、同じ悩みを打ち明けづらい。話しても、「社長令嬢は大変ね~」という目でしか見られない
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    こうした声にこたえ、女性経営者・女性後継者・後を継ごうと思っている人、継ごうかどうしようか悩んでいる人、などが集まる場を提供し、お互いに安心して本音を言い合える場を作ること、これが「跡取り娘.com」の意義ではないかと考えています。

    日本跡取り娘共育協会 監事   小林博之